20170611_富国と強兵~地政経済学序説~ 読書会記録

1. 経済学には現在二つの系統がある。アダムスミスを祖とする経済自由主義マルクスを祖とするマルクス主義。 しかし、歴史上これら二つの理論からは導きだされない経済政策にてい景気回復をさせた事例がある。それらを早々して経済ナショナリズムと呼んでいる


2.  通常、経済自由首義では経済は国家・政治と独立関係にあると議論されている。それにたいして、マルクス主義では経済が政治を決めると論じられている。 経済ナショナリズムでは国家・政治が経済を決めるという風にマルクス主義とは逆の関係に位置する。


3. 国家・政治と経済の相互干渉の関係性については理論的には未だまとめられていない。直観的にはすごくあたりまえの事であるが。 そもそも国家論というものが危険思想とみなされやすいという経緯もある。経済を論じるうえで国家とは何かということをまじめに問い直す必要があった。


4. 少し飛躍して聞こえるかもしれないが、本来、国家論は軍事学ぬきでは成立しない。日本は軍事論抜きで経済成長してしまった非常な稀有な例である。国内で軍事論をやろうと思うと机上の空論にしかなりえない。 経済的な成功例はたくさんあるのだが。

5.そもそも軍事学が何のためにあるのかというと、領土を争うためである。軍事学地政学とほとんど同じものと言える。 ポリティクスはジオポリティクスの事である。 そこで、ポリティカルなものとジオグラフィカルなものがなぜ関係あるのかを知りたかった。 国家はなぜ領土を必要とするのか?


6.歴史的には、ナショナリズムという概念がでてきたのは最近のことである。 国家と領土の関係は少なくとも中世までは密接ではなかった。 近世になり国家と領土の関係性が増してきたところで、nation(国民国家)という概念がでてきた。


7.今回の著書では最初にまずハルフォード・マッキンダーについて論じている。彼は地政経済学の開祖とみなされることが多い。 彼は19世紀の保護主義運動の中にいた人物の一人でフリードリヒ・リスト等の影響をうけていることが分かっている。


8.次に貨幣概念について論じています。 貨幣は経済において交換手段として受け入れられている「特殊な負債」です。 そして、貨幣と国家の関係はわかっているようで、しっかり理解している人はほとんどいません。


9.価値の根拠として①金属主義と②表券主義ああります。金属主義は貴金属の内在的な価値に依拠し、表券主義は発行主体である国家権力に依拠しています。(省略)


10.貨幣は信用関係によって成立しています。そして、信用関係は極論を言えば人間関係のことです。「関係」こそが実態です。 経済学ではこの関係をいまだに理論家できていません。 人間関係は不安定なものです。ですから経済も不安定化しやすい。そこでもっとも安定なものは国家です。


11.  経済が不安定なままでいいなら国家もいりません。 人間関係を「横の関係」と呼ぶとすると、「縦の関係」は国家(権威・権力・強制力)ということになります。 縦の関係だけあれば良いというのが社会主義であり、横の関係だけあれば良いというのが自由主義です。


12. 縦なんてなくても横だけあれば良いというのが、ここ数十年続けられてきた経済政策です。横の関係というものは権力とは無縁です。それにたいして、縦の関係は暴力的だとみなされやすい。 しかしながら、横の関係だけだと不安定になってしまう。人間関係は不安定なので。


13.  話が少しそれますが、「個」と「関係」についてです。 関係があって個が決まるという考え方があります。ゲシュタルト心理学とも呼ばれるものです。人間というものは、社会の中の網の目の中の位置で「私」が規定されています。


14. それと同様、国際関係が国家を規定するという考え方があります。リレーショナリズムやホーリズムです。 ですから、ナショナリズムとはインターナショナリズムのことです。 国家が大事というのは国際関係が大事ということです。 人間が大事というのは人間関係が大事というのと同様に。


15. 今回書いていてわかってしまったことがあります。 ずっと疑問でした。ケインズの理論を知らないヒトラールーズベルトがなぜあの時代にケインズ主義的な結論を実行できたのか。 それは、第一次世界大戦をみんなが経験していたからなんだと。


16. あの時代、自由主義の理論からも、社会主義の理論からも導き出されない実践知として、「国家総動員をすると経済格差が縮まり景気が回復する」というものがありました。 第一次世界大戦を経験して多くの人がそれを理解していたんです。 総力戦を理論家したのがマクロ経済学だったわけです。


17. しかしながら、今の時代にそういうことを言うと危険思想とおもわれてしまいますから、難しいわけです。 デフレの時とインフレの時でやるべきことが非対称なのも実行を難しくしている要因です。ケインズは「ベルトを緩めても太れない。」と言っています。以下省略